私は、最近心がじんわりと温かくなるような映画の話を知りました。
「いくつになっても夢を見たっていいじゃないか」
そんなメッセージを、85歳の主演俳優・匡克(まさかつ)さんが堂々と演じた映画です。
そのタイトルは『米寿の伝言』。

米寿の伝言公式サイトより
娘さん(西本浩子さん)が企画・プロデュースし、孫たち(西本健太朗、西本銀二郎さん)が助演するという、親子3世代で挑んだ自主制作映画なんです。
「米寿の伝言」は、変わり者の発明家のおじいちゃんが誕生日に亡くなってしまうのだが、突然おじいちゃんの遺体と孫が入れ替わってしまうところから始まります。
火葬される前に何とか元に戻そうと紛争する家族や周囲の人々。笑いあり、涙ありのユーモラスあふれたハートフルコメディになっています。
プロデュースをした娘の浩子さんは、今88歳の父がこんなに元気で頑張っている姿を皆さんに見てもらいた。
「もたもたしていられないな」、「自分も何か始めよう」、「何かに挑戦してみよう」と思ってもらえたら嬉しいと語っていらっしゃいました。
そして「親がもうそろそろという私たち世代の人たちに言いたい。親とは生きている間でしか絶対に関われない。後で後悔しないように今、親孝行を…」と。
私はその言葉に胸をつかまれました。
「やんなよ!」のたったひと言で、85歳父の人生に新たな扉が開いた
浩子さんの父・西本匡克(にしもと・まさかつ)さんは、若い頃に俳優を目指していたそうです。でも、家庭の事情で夢をあきらめ、教員としての人生を歩んでこられたとのこと。
ある日、孫の舞台を見に行った匡克さんは、孫の演技に対して熱心に指導をしたんです。

米寿の伝言公式サイトより
そんな父の姿を見た浩子さんは「ああ、本当は心の底から演劇がしたかったんだな」と気づかされ、思わず発した言葉が「やんなよ!」
すべては、その言葉から動き出したんです。
挫折、そして再起。家族が一丸となってつかんだ舞台公演
ところがそう簡単ではなかったらしい。
はじめはやる気満々だった匡克さん。
1ケ月前から渡された台本を見て「なんやこんだけか」とこぼす匡克さんだったが、現実は厳しかったといいます。
お稽古場に行くと、台詞が思うように出てこず、すっかり自信を失ってしまった匡克さん。とうとう「しばらく稽古を休む」と言い出したとのこと。
浩子さんは「とんでもないことをしてしまった…と自分を責めました。」と語っていらっしゃいました。
本当は、大好きな演技ができて、イキイキとした姿を見ることができると思っていた浩子さん。でも自分が背中を押したことで返って自信を喪失させてしまうことになるなんて思ってもみなかったと思います。
そんな中、絶望的な状況を一変させたのは、長年連れ添った奥さんのひと言。
「男が一度やると決めたら何言うてんの!最後までやり!」
さらに、浩子さんは演技仲間を家に呼んで、家族総出で匡克さんの練習にとことん付き合ったといいます。
そんな特訓の成果があり、お稽古場に行った匡克さんの口からはセリフがスラスラと出るようになり、まるで、水を得た魚のように生き生きとした表情を取り戻していきました。
順調にお稽古をこなしていったといいます。
そしてついに、念願の大阪での舞台公演を果たし、翌年には東京での舞台公演も見事にやり遂げたのです。
家族の力で夢が叶ったんです。
そして映画化へ。「父を主演にした映画を撮りたい」

米寿の伝言公式サイトより
浩子さんの情熱は拍車をかけ「父を主演にした映画を撮りたい」と再び決断。
2022年にはクラウドファンディングを立ち上げ、映画『米寿の伝言』の制作が始動しました。
撮影が進む中、話題は口コミで広がり、テレビ朝日『激レアさんを連れてきた』にも出演。
俳優の中尾明慶さんが収録現場に潜入したこともYouTubeに上がっています。
そしてついに、2025年5月、東京・池袋シネマ・ロサで2週間の劇場公開が実現。
各地方の新聞でも取り上げられるほど大人気になりました。
また、2025年5月に舞台挨拶では匡克さんは心から嬉しそうで、得意げにジョークを交えながらメッセージを送っていたとのこと。
「もう、嬉しそうにどや顔で言ってるんですよ。私はその顔を見ているのがものすごく好きなんです。」と嬉しそうに語ってくださった浩子さんでした。
また、5月15日に匡克さんは88歳(米寿)の誕生日を迎えられました。
ほんと最高の贈り物だと思います。
言葉にできない家族愛。「宝物をありがとう」
さらに感動したのは、匡克さんが収録後に台本の最後のページに残した文字。
「宝物をありがとう」と記してあったそう。
「父がそんなことをするなんて驚いたし、嬉しかった…」と浩子さんは話してくださいました。
主題歌にもこだわり。「Like a bird in a cage」
さらに注目したいのが、弘子さんがこだわり抜いて選んだ楽曲。
シンガーソングライターkiroさんによる『Like a bird in a cage』。
浩子さんは「コレっ、すごい映画にピッタリだ!これにしたい…」と直感で決めたそうです。
柔らかなワルツ調になっていて、やさしく包み込む歌詞とワルツの旋律が映画『米寿の伝言』のエンディングロールを引き立てていきます。
映画が終わってもしばらくはぼーっと余韻に浸っていたい。そんな気持ちにさせてくれる暖かい楽曲になっています。私は、YouTube動画で聞きましたが、聞いた瞬間から引き込まれていきずっと鳥肌が立っていました。
『米寿の伝言』主題歌:Like a bird in a cage

YouTube Like a bird in a cageより
88歳の挑戦 次なる夢は『47都道府県コンプリート!』
今後は全国上映を目指し、親子で各地を巡る構想も進行中。「なるべく元気なうちに父と全国を回って、88歳の父の姿を見てもらいたいと浩子さんは目を輝かせていました。
『米寿の伝言』は、全国上映が始まったばかりです。
大阪・TOHOシネマズ梅田では6月6日から、北海道・サツゲキでは6月20日から上映が決定しました。
詳しくは、私が手掛けたニュース記事をご覧ください。
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主演・父(88歳)、企画・娘、出演・孫 家族3世代で作った話題の映画『米寿の伝言』とは
ぜひ、あなたの大切な人と一緒に観てほしい作品です。
そして、もしあなたにも「やってみたいこと」があるなら、今こそ動き出すときかもしれません。
親に、子に、孫に、自分に。何かのきっかけになる映画です。
“親孝行”って、なんだろう?
私の両親は他界しましたが、義母は高齢になり、「何かしてあげたいけれど、何をすればいいのか」と考えることがあります。
親が夢を持ち、それを応援する子どもがいる。
この映画を通して「親の夢をかなえる」という親孝行のあり方をあらためて考えさせてくれます。
「親とは、生きている間しか絶対に関われない。だから後悔しないように、今、親孝行を」浩子さんの言葉が、心に深く刺さりました。
何かを始めるのに、遅すぎることはない
私は思います。
「何かを始めたい」と思っているなら、やってみる。
「誰かの夢を応援したい」と思ったなら、声をかけてみる。
年齢なんて関係ない。人生に遅すぎるなんて、本当にないんだ。
やったことがないことでも、今から始めればいいじゃない。
失敗してもまたチャレンジすればいいじゃない。
やりたかったらやればいいよ。
やりたいと思って行動している時が一番楽しいし、一番幸せだと思うから。
改めて『米寿の伝言は』は教えてくれました。